二次元の美少女とは何なのか?(ステレオタイプ編)

2019年2月18日月曜日

コラム サブカルチャー ステレオタイプ




この記事は後編です。
前編をまだ見ていない方は先にこちらを見ることをおすすめします。

前回では、イデア論によってキャラクターの存在を認識するという考察を行った。簡単に説明すると「私達は完璧な三角形でなくても三角形だと認識できるように、完璧な人でなくても人と認識できる」という結論であった。

この記事ではイデア論とは違い、私達に潜む思い込み――すなわちステレオタイプ――によってキャラクターを認識しているのではないかと考え、掘り下げて行こうと思っている。





ステレオタイプなキャラクター


定義

まず、ステレオタイプとは何だろうか?
おそらく多くの人が聞いたことはあるだろうが、一度確認しておこう。
ステレオタイプ(英: Stereotype、仏: Stéréotype)とは、多くの人に浸透している先入観、思い込み、認識、固定観念、レッテル、偏見、差別などの類型化された観念を指す用語である。

これについてはもうそのまま思い込みだとか先入観と覚えてもらって構わない。
あまり難しく考える必要はない。例えば「あの人は○○だから云々」というような発言を聞いたことはあるだろう。この○○には性別だったり、人種だったりが入る。要するに根拠のないデタラメな思い込みである。木を見て森を見ず。

更に拡大して、創作ではこういうキャラはこういうものだとする風潮がある。例えばメガネをかけた地味なキャラクターは風紀委員であるだとか、中国人は語尾に「アル」をつけるだとか。

これらは創作においてかなり多用されている。アニメや漫画はもちろん、ドラマや映画ですらそうだ。
キャラクターを見た時に、またキャラクターの喋り方を聞いたときに、私達は当てはまるタイプにすぐに分別する。これがステレオタイプなキャラクターである。

タイプ

ステレオタイプは自身の情報量の処理能力を超えないために、対象を過度にタイプ分けする。そのタイプ分けとはどのようなものか。前回も使用したキャラクターを使って解説しようと思う。

制作ツール:きゃらふと

また登場してもらったこのキャラクターだが、名前も決まっていないのでそろそろ付けてあげたほうが良い気がしてきた。

それでは、このキャラクターにはどのようなタイプがあるだろうか?
ぱっと見でこのような印象をもつのではないだろうか?
女性金髪低身長(低頭身)・白と黒の服装など。

この時点でこのキャラクターに対する印象はほぼ全て決まっていると言えるのだが、さらに付け加えるなら、細部設定というのがある。
これは創作物であれば作者が、このキャラはどうこうなどというプロフィールを書き、それを見ることによって更に印象を強化することになる。

例えば外見的特徴からは、あまり騒がしいような印象は受けないだろう。
もし設定で”おとなしい性格”なんて書かれていようものなら、ますますその印象を強化する。そして私達の頭の中で、そのキャラクターが”作られる”。
これが典型的なステレオタイプとして見るキャラクター像である。

これは現実でも起こる現象である。例えばあなたの友人(友人A)がまだ知らない友人の友人(友人B)を紹介する際に、写真を見せたとしよう。その写真からはおとなしい感じがする、そして友人Aが友人Bはおとなしい子だと告げる。こうされるとあなたの友人Bに対するイメージは決まってしまう。たとえ本人に会っていなくてもだ。

何故かというとそれ以外に情報がないからであって、実際に会ってみたりだとか、長く話してみたりすると印象がガラリと変わるなんて話は沢山あるだろう。

しかしもしそれが人ではなく、一枚絵だったなら。そのキャラクターの印象を修正することはできないだろう。

もし一枚絵ではなくアニメとしてであれば修正できないとは限らない。よくある話だが、小説の登場人物がアニメに登場した時に「イメージと違う」だとか「声に違和感がある」といったクレームは割とよく見かけるからだ。これはまさに、実際に会うと印象が変わるといったような状況に似ている。

ところで問いてみよう。
あのキャラクターは、本当に美少女か
私が美少女キャラクターだと説明したから、そう勘違いしただけなのではないか?

AIで作られる美少女


とは言ったものの、世の中には美少女キャラクターというのは実際に溢れていて、サブカルチャーにおいては広く認知されている。ソーシャルゲームのキャラクターなどは、そのような大多数が注目するようなキャラクターを作り出すし(萌キャラなどと呼ばれる)それらに一定の需要があるため、売れていく。

ある一定の層にはそのキャラクターが美少女であるという共通認識があるとでもいうのだろうか?と思い、いろいろと調べていたところ、興味深いサービスを見つけた。

金さんたちが作ったサイトはその名も「MakeGirlsMoe」。好みの髪の毛の色や髪形、目の色などを入力し、「create」ボタンをクリックすると、AIがほんの数秒で、好みに沿った女の子のイラストを出力します。
関連サイト:MakeGirlsMoe

このMakeGirlsMoeで使われている技術はディープラーニングという機械学習を使用して作られていて、過去の大量の画像データを分析して自動生成するというシステムらしい。

ここで一つ気づきがないだろうか。先程、一定の層にはキャラクターに対する共通認識があるという話をしたが、このサイトの存在はまさに”共通のナニカに美少女を感じる”という事への裏付けとならないだろうか。

大きな思い込みによって、美少女という存在は作られているのではないだろうか。その思い込みとは”このような特徴を持つ絵は美少女である”というような、ある種のステレオタイプによって、私達はキャラクターを認識しているのかもしれない。

そのキャラクターがどのような性格だろうとかも、恐らく今までの思い込みそれを強化する創作者の設定によって支えられていくのだろう。

思い込みへのカウンター


ちなみに、私達の思い込みというのは反撃されやすく、その思い込みを故意に破壊することで印象を変えさせるということを利用する手法が創作には存在する。

行動のギャップ

私達はあるキャラクターがAという行動をとるだろうと思いこむ。しかし、もしAではなく真逆のBの行動をとったとしたらどうなるだろうか?
おそらく、すこし可笑しいと感じて、驚きや笑いなどが出てくると思われる。
これらはギャップと呼ばれ、AとBの差が大きいほど強くなる。「まさかそんな行動をするなんて」と思わせる。

これはまさに思い込みへのカウンターと言える。思い込みによって予測できた行動(A)ではなく、思い込みからかけ離れた行動(B)をすることにより、そのキャラクターへの思い込みが破壊され、印象が変わることを意味する。このギャップという手法は創作でも多く使われており、私達がいかにキャラクターに対して思い込みをしているかがわかる。

男の娘

サブカルチャーには男の娘というキャラクターも存在する。これは女性にしか見えないキャラクターが、設定上は男性である時に使用される。

このキャラクターも思い込みへのカウンターと言えるだろう。私達が推測するキャラクター像(A)と、作者が定義する詳細設定(B)との間に大きな差が生じることにより、そのキャラクターの第一印象を捻じ曲げる

男の娘は視覚を使用する作品に見られる事が多く、第一印象による影響は大きくなりがちなため、設定によって印象を変えられた時の意外性はとても強くなり印象に残りやすいだろう。私達はぱっと見によってもキャラクターへの思い込みをしているのだ。

まとめ


イデア論では、私達はイデアを思わせる要素によってキャラクターを錯覚すると考えた。しかし思い込みという考え方では、私達は集団によって作られた共通認識の元、判断しているという事が考えられる。

はっきりと言ってしまうと、この問には答えはない。
何をどう思うか(定義するか)などは人によって違うからである。
あの絵はネコを表していると誰かが言っても、違う誰かはイヌだと答えることもあるだろう。しかし、多くの場合でそうならないのは、共有された認識によって少しばかり私達の認識が支配されているからかもしれない。

参考