見えない差別をどう”見る”か:IATテスト

2019年2月21日木曜日

差別 心理学 無意識




「あなたは差別をしますか?

あなたは差別をするかと聞かれて、「します」と答える人は居ないだろう差別をしてはいけない事だという感覚は正常だし、社会的にも称賛されるものだ。仮に「します」など答えようものなら数々のバッシングを受ける可能性すらある。

しかし、そのような発言が作られたものである事も私達は知っている。立場が悪くなるのを避けるために、本当は差別大好きであっても「しない」と答える。

もちろん、本当に差別なんてしないと思っていて「しない」と答える人も多いだろう。しかし、彼らは本当に差別しないのだろうか




IATテスト


IATテストとはImplicit Association Testのことで、人々の心の奥で感じている差別感情を表面化させるために作られた心理テストである。このテストの特徴として、心理テスト系でよくある記入式ではなく、対象と言葉を組み合わせて行われる。

テストの内容


例えば、蝶と蜘蛛が居るとしよう。あなたは蝶と蜘蛛のどちらを嫌っているだろうか?
言葉では蜘蛛が嫌いだと言っていても、本当は蝶が嫌いかもしれない
IATテストではまず、蝶と蜘蛛を見せる。そして良いか悪いかに2つを分け、それを識別する速度によって差別意識を判断する。

文字で書いてもよくわからないと思うので、画像で説明しようと思う。


このIATテストでは良いものを左に、悪いものを右に振り分けていく、その上には対象が書かれており、例えばこの場合だと”蝶 または 良い”となっていて、蝶の画像と良いものは左に振り分け、蜘蛛の画像と悪いものは右に振り分ける。この判断は瞬時かつ正確に行うことを推奨している

また、診断が進むとパターンが変わる。その変わったパターンがこちら。


良いと悪いはそのままに、蜘蛛と蝶を入れ替える。そしてまた瞬時に振り分けていくことになるのだが、もし蜘蛛が嫌いであるならばこの時点で躓いて、瞬時に良いに振り分ける事が困難になる。この良いと悪いだったりといった振り分け速度の速さによって差別的か否かを判断するのがIATテストである。

私達は思い込んでいる事への反応は早くなる傾向にある。それを逆手に取ったテストといえよう。

よくわからなければ検索することをオススメする。IATテストはパソコンとキーボードさえあれば無料で受ける事が可能なので、一度受けてみるといいかもしれない。

IATテストはこちら

テストのメリット

私達は差別しているかしていないかを判断する時に、チェックシートなら必ず社会に合わせた回答をしてしまう。しかしこのテストは無意識を判断するため、バイアスがかかりにくい。

また、バイアスがかかりにくいという点で、自分自身がどのくらいの差別感情を持っているかを客観的に確認することができる。いくら自分が差別していないと思っていても、無意識的に差別を行っている場合もあるため、行動の発見と抑制につながるだろう。

そしてこのIATテストだが、データを収集し、世界中で何%の人が差別的かどうかなどがわかるようになっている。このデータは非常に有用であり、どのくらいの人が差別的感情を持っているかを考え、それを減らすようにメディアなどが努力することもできるだろう。

テストのデメリット

テストのデメリットとされているものに、予期せぬ結果がある。例えば自分自身は差別など絶対にしない、差別なんて許さないと思っていて、そのように行動してきた人がテストを受けた結果、差別的であると判断されることもある。

私達は無意識下で何を考えているかわからない。ある意味、自分自身への疑心暗鬼を強めることになってしまうかもしれない。

このような事を防ぐため、IATテストでは開始前に注意書きがされている。

問題点


無意識を扱い、自分の差別感情の度合いを理解できる画期的なテストだが。このテストにはいくつかの問題点も指摘されており、鵜呑みにするのはまだ早いかもしれない。

問題の順番

このIATテストでは、始めと次とで対象が入れ替わる。入れ替わりの瞬間には十分なインターバルが存在せず、脳が始めの質問で適応しているにもかかわらず、逆のことをさせるので差別感情以前に混乱して時間がかかってしまう。

これについては実際にテストしてみると理解できるだろう。急な変更に即座に対応できる人はなかなか居ないと思われる。また、慣れの問題というのもあり、初めて行う際にはよくわからずに時間が少しかかってしまうといったものもある。

感情のゆらぎや再現性

早い話、その日の感情やコンディションに左右されるということ。同じ人が2度3度と繰り返し行うことで、結果が変わってしまうことがある。

その日たまたまイライラしていたり、悲観していたりがあったなら、選択に影響を及ぼすのは容易に想像できるし、ではいつが正常なコンディションなのかというのも不明だ。私達は日々イライラすることもあれば楽観的な時もある。そのゆらぎに診断が左右されてしまうというのは、あまりよろしくない。

そもそも、再テストで同じような結果が得られることがあまりないとも、これでは信頼性に欠けると言われても仕方がない。

そもそも個人の問題でない


差別感情は個人の無意識的なものばかりではなく、社会や環境によって起こるという問題。

ある研究によると、グループを白人グループ(A)、アフリカ系アメリカ人グループ(B)、ラテンアメリカ人グループ(C)に分けてテストを行った際。黒人差別のIAT効果はAグループが最大となり、Bグループが最小となった。

これは日本でいうと、欧米人よりもアジア人に親しみを感じるというようなものであり、生きてきた社会や自分の所属するグループによって全く違う結果になるという事になる。言われてみればそりゃそうだねって思う。

まとめ

IATテストは心理テストとして画期的であり、無意識の差別感情について知ることのできる素晴らしいテストであるが、同時に問題点もそれなりに指摘されている。

結局のところ、IATテストの判断するところは環境やグループによるものが大きいのかもしれない、私達は進化の過程で集団内の人間と集団外の人間をすばやく識別できるように進化したとも言われているし、このテストにそこまでの意味は無いのかもしれない。

しかしそこで思考を停止させるのではなく、差別について、そして外のグループとどの様に関わり、共存するかについては、これからも深く考えていきたいところだ。

参考